見えない世界
今回の仏像話は現物も私が所有する話。
母方の祖父、金次郎氏は海軍を志願し、その後、全ての金を失い密航によりアメリカはロサンゼルス、サンフランシスコに渡り約13年間生活した。アメリカに渡る船も当時は粗末な木製、現代からすると映画の様な船。何ヵ月もかかり渡った。密航である為、生きて着けば御の字、途中、病気や沈没で死ねば仕方ない構えだった様だ。船は嵐や台風で何度も沈没しそうになる。同じ密航者の中に中国人がいた。中国人は食糧も無く、かわいそうに思った金次郎氏は隠れて食糧を与えた。また病気にかかると看病したりと中国人の面倒をみた。金次郎氏がサンフランシスコで降りる際に中国人は降りなかった為、その後中国人は、どうなったのか?わからない。降りる間際に中国人が大変御世話になった御礼にと一体の像をくれた。船の中で石炭を削り少しずつ作った像。アメリカでの生活でも金次郎氏は大切に保管し帰国時に持ち帰った。優に100年以上を経過した何の物質的価値もない像だが、じっと像を眺めていると何か?不思議と語りかけられる気がする。困っている人を助ける性格の金次郎氏の徳積みが家族を無事に生かさせてくれていると感じる。像を通じて故、金次郎氏に手を合わせる。